那須北部 足倉山(1370m)、鍋山(1410m)、鎌房山上岳(1329m)、鎌房山下岳(1313m) 2015年3月21日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 7:07 駐車余地−−7:15 柄沢−−7:46 柄沢を離れる−−8:17 足倉山東尾根−−8:41 足倉山 8:50−−9:25 トラバース開始−−9:49 1405m峰−−10:28 鍋山(休憩) 11:18−−11:49 1330m手前−−12:35 鎌房山上岳−−13:06 鎌房山下岳(休憩) 13:51−−14:20 鎌房山上岳−−15:14 1340m鞍部(休憩) 15:45−−16:17 1419m峰−−16:50 旧国道−−16:55 駐車余地

場所福島県南会津郡下郷町/天栄村
年月日2015年3月21日 日帰り
天候
山行種類残雪
交通手段マイカー
駐車場国道除雪余地に駐車
登山道の有無無し
籔の有無積雪で不明だが雪が無い場所を見た限りでは籔は薄そうだった
危険個所の有無高倉山の尾根は両側が切れ落ちて転落注意
山頂の展望高倉山は西側の展望が良好。他の山頂はブナに覆われ木の間から見える程度
GPSトラックログ
(GPX形式)
ここをクリックしてダウンロード
コメント国道289号線旧道分岐から往復。足倉山は岩がヤバそうな西尾根を避けて雪に埋もれた谷を経由して東側から攻めるが、尾根上は両側が切れ落ちて雪が付いた時期は危険地帯でアイゼンに切り替え。山頂は西側が開ける。危険地帯以降はずっとスノーシュー利用。天気が良く気温が高めで北斜面を除いて雪の状態は悪く、鎌房山上岳/下岳の急な登りは雪がグズグズで苦労した。全体的に雪が消えた部分の籔は薄く、この標高だと無雪期の方が楽かも知れない




旧国道分岐入口の駐車余地 気温は-3℃
旧国道は除雪無し 柄沢沿いに進む。林道があるようだ
踏み抜きが増えてスノーシュー装着 最初の砂防ダム。以降いくつか砂防ダムあり
右岸が切り立ってきたら左岸に移るのがいい 左岸側にも林道があるらしい
沢が雪に埋もれるようになった 1310m鞍部へと続く谷に入る
無雪期はたぶんナメ滝だろう 1310m鞍部。地形図にある崖は無かった
足倉山方向に向かう。両側は切れ落ちている 無雪期は籔は少ないかも
アイゼンにスイッチ 慎重に進む
山頂が見えてきた(奥のピーク) 山頂直下は急な雪面
足倉山山頂 切り株
足倉山から見た二岐山 足倉山から見た高倉山
足倉山から見た那須北部
足倉山から見た観音山
足倉山から見た西の展望
足倉山から見た会津駒ヶ岳〜丸山岳(クリックで拡大)
足倉山から下山開始 デポしたスノーシュー
1350m峰への登り 1330m鞍部から巻きにかかる
1405m峰手前で尾根に向かって登る 1405m峰付近から見た足倉山
1405m峰 1300m鞍部へと下る
笹は薄そう 鍋山手前標高1350m付近
もうすぐ鍋山 鍋山山頂。人工物無し
鍋山から見た北側 鍋山直下から見た会津磐梯山
鍋山北側の1320m鞍部付近 南向きの尾根は雪が少ない
1369m峰から見た鎌房山 1369m峰から見た高倉山
1369m峰から見た舟鼻山。ミニ苗場山 1369m峰付近は樹林が開けた尾根が続く
目印発見!
1330m峰から上岳向かって下降
真新しいカモシカの足跡 1248m峰への登り。地形図で見るよりかなり急
1248m峰から登ってきた尾根を見下ろす この上が1248m峰てっぺん
1248m峰てっぺんはアスナロ 鎌房山上岳の登り
写真では分からないがかなり急で雪の状態も悪かった やっと傾斜が緩んで北上
鎌房山上岳山頂 鎌房山下岳へ向かう
鞍部への下りはけっこう急だが北尾根で雪が締まって歩きやすい 1200m鞍部から見た下岳
相変わらずブナ林が続く またもや腐れ雪の急斜面を登る
籔は薄そう 露岩が目立つが岩を登る必要はない
鎌房山下岳山頂 山頂に熊棚あり
山頂西側は雪なし、籔無し アスナロの古い荷造り紐
下山開始。スノーシューを滑らせたりコケたり・・・ 上岳への登り返し
上岳再び 上岳を下る
急な下りも腐れ雪なのでスノーシューのまま我慢 1248m峰の急な下り。スノーシューのままバックで下った
郡界尾根に乗って南下 1340m峰付近
途中で休憩 鍋山は西側を巻くことに
傾斜は緩く歩きやすい 1390m鞍部で鍋山南西尾根に乗る
1419m峰へと緩やかに登る 1419m峰
やっぱり無雪期の笹藪は薄そうだ 緩やかな南西尾根を下る
やっと足跡の主、カモシカに遭遇 籔少ないなぁ。この時期に来て損したかも
目印が数か所あった 細い木が多い
谷を挟んで芦倉山。険しい山容 雪庇が続くと展望がいい
標高1240mで南に分岐する尾根に入る 目印はこちらの尾根に続いていたが数は非常に少ない
尾根が狭まると灌木が目立つように この先は急な下りなので左へ逃げる
細い灌木に覆われた斜面を下る 南斜面で雪は緩んで滑りまくる
スノーシューでの踏み抜きはきつい 最後は杉植林。まだ花粉は無し
旧国道に出た場所から振り返る 旧国道を歩く。帰りはスノーシューでも少し沈んだ
不法投棄監視用カメラ。動いているのか? 車に到着


 那須北部の大白森山西側には登山道の無いマイナーな山がいくつかある。鍋山、足倉山、高倉山、そして鎌房山の上岳、下岳である。先週は大白森山東側の鎌房山に登ったが、天気が良ければ上岳、下岳のある方の鎌房山に登りたかった。今週末は天気が期待できるので挑戦してみることにした。

 珍しく下調べで鎌房山をネット検索してみたが、無雪期の沢登りの簡単な記録が1件あったのみであり、想像以上にマイナーなことが分かった。雪がある時期は車でのアプローチの都合上、二岐温泉から登るのが一番近いルートと思えた。しかし、せっかくなので尾根続きである鍋山、足倉山、高倉山等を考慮に入れると二岐温泉はちょっと遠い。地形図上で検討した結果、下郷側の国道289号線旧道分岐に車を置いて足倉山、鍋山経由で鎌房山を往復するのが一番効率がいいと判断した。ここだと柄沢から足倉山か鍋山に取り付けるので尾根に出るまでの距離が格段に短縮できる。

 高倉山は少し離れた位置にありアップダウンがあるので日帰りコースに組み入れるのは無理なので、別の機会に登ることにした。

 今回のコースで最大の難関は足倉山へのルート。単純に西尾根を登れればベストだが、等高線の混み方と山頂近くの尾根両側のゲジゲジマークからして危険地帯は確実だ。雪が無い時期ならまだ考慮に値しようが、今の時期は私の実力では無謀だろう。次善の策としては東側から攻めるしかないが、足倉山の東西に伸びる尾根の傾斜が緩むのは柄沢を遡上して標高1110m付近まで進み、1330m峰から北に落ちる尾根が傾斜が緩くて安全そうだ。問題は柄沢が遡上可能かどうかであり、こればかりは現場に行ってみないと分からない。滝が無いこと、流れが雪に埋もれていることを祈るばかりだ。

 白河ICで降りて勝手知ったる道を西に進んで下郷へ出て、ちょうど1年位前に観音山に登った際に使った駐車余地を利用。ここは旧国道が分岐する場所で、新国道から4,5mくらい先まで除雪してあって車を置いても迷惑がかからない。朝の気温は-3℃、路面は昨日溶け出した水が凍ってツルツルの場所もあり、まだ冬タイヤが必要だった。

 本日の装備は気合を入れて12本爪アイゼンにピッケル、スノーシューにお助けロープとした。ロープの出番が無いことを祈る。

 雪に埋もれた旧国道を東へ。まだ気温が低くつぼ足で踏み抜かないのでスノーシューはザックの後ろ。右前に見えるピークが足倉山だが、地名図から読めるように急傾斜で立ち上がっている。この尾根を避けて柄沢を遡上するため、旧国道が橋を渡って右に逃げるところで直進。残念ながら柄沢は雪に埋もれることなく流れが出ていた。

 右岸側には林道があるようで樹林が開けた広い幅の筋を歩くが、頻繁に雪を踏み抜くようになったのでスノーシュー装着。とたんに踏み抜きは無くなり歩きやすくなった。すぐに砂防ダムが登場、その上流側は右岸側の傾斜が急になり左岸側が平坦で歩きやすいのでそちらへ乗り移ることに。沢の水量は少ないのだが、流れと雪面の高さの差が2m近くあって、降りるのも登るのも手がかり無しでは困難な状況。うまい具合にスノーブリッジが現れだしたが頼りないものが多い。しかし1本だけ倒木上に雪が積もったブリッジがあり、これなら崩壊の心配が無いので安心して利用させてもらう。

 以降は左岸側を歩いたが、こちらにも雪に埋もれた林道があるっぽい雰囲気だった。いくつか砂防ダムを過ぎて沢が細くなると右岸側が切り立つようになり、とうとう流れの大半が雪の下に隠れるようになった。こうなればルートの自由度が格段に上がって、歩きやすいところを適当に拾いながら進んでいく。谷の傾斜は緩やかで滝は無い様だった。

 やがて右手に顕著な谷が分岐。地形図を見ると足倉山東尾根の1310m鞍部へ続く谷のようだ。当初計画ではこのまま柄沢本流を遡上する予定だったが、地形図を見るとこの谷の傾斜は緩やかで、鞍部直下に崖マークがあるが左に迂回すれば安全に鞍部に出られそうだ。こちらの方が直線的に尾根に向かうので距離が短くて済むし、計画を変更してこの谷を登ることにした。

 この支流も大半の区間は流れは雪の下で歩きやすかった。一部流れが出ている個所はナメ滝らしかったが、雪が積もっていればスノーシューでも普通に登れる傾斜だった。そのまま谷を進んで鞍部直下へ。地形図では崖があるはずだがそれらしい地形は見られず、難なく鞍部へ到着することができた。

 まずは足倉山へ向かう。西へ向かう尾根はいきなり急な傾斜で立ち上がっており、中倉山の険しさをちょっとだけうかがわせる光景。まだスノーシューでいけるだろうと出発。雪庇が階段状になった部分では這い上がるのに苦労する。尾根はそれほど痩せてはいないが南側、北側とも切れ落ちているのでスリップは許されない。雪庇を迂回するときは慎重に進む。ピッケルがあってよかった。ルート判断にはカモシカの足跡が役立った。

 一部尾根が痩せた場所は積雪が少なく地面が見えていたが藪は薄かった。植生は主にアスナロで、雪が無い場所では少ないながら石楠花もあった。雪の下にアスナロ幼木が隠れているのかどうかは不明だが、それさえ無ければ無雪期の方が楽に安全に登れそうだった。

 小ピークを越えて次の鞍部からは、山頂手前で樹林が開けた雪の急斜面が見えている。この辺から危険地帯になりそうなのでスノーシューをデポして12本爪アイゼンに履き替える。このアイゼンは今シーズンは初登場。これまでは安易な山ばかりだったからなぁ。ここからは気合を入れる。

 さすがにスノーシューと違って踏み抜きが頻発するが、急斜面での足のとりまわしは格段に楽になり、スノーシューを履いたままのキックステップよりもグリップが向上。急な雪面はピッケルを打ち込みながらキックステップを刻む。山頂直下が一番傾斜がきつく立木が無く開けた雪面だったが、雪の状態は良好で怖さはそれほど感じなかった。

 急な登りが終わればほぼ山頂。これまでは樹林に覆われていたが山頂付近は樹林が開けていて明るい場所だった。雪面上に突き出た木の切断面を見た感じでは伐採されたように思えた。ただし完全に周囲を見渡せるほど倒されてはおらず、展望は南〜西にかけて得られた。西側の真っ白な長い稜線は会津駒ケ岳から丸山岳にかけて。今日は天気がいい。

 山頂付近で標識や目印がないか探したが一切見当たらず。栃木県の山なら手製標識の11つや2つがあっても不思議ではないが、県境を越えて福島県に入ると様子が変わる。下山後にネット検索してみたが、高倉山の登頂記録は発見できなかった。最高点に一番近そうな低木の枝に赤テープを残した。

 まだ出発からそれほど時間が経過していないので休憩はせずに鍋山に向かうことにして往路を逆戻り。下り始めでいきなりルートミス。尾根地形に導かれて少しだけ南に下ってしまったが、往路の自分の足跡が無いのですぐに分かった。東へ下る尾根は急激に下っているので山頂から分かりにくい。ここだけは木が無いのでバックで下った。

 鞍部でデポしたスノーシューを回収、次の1310m鞍部で危険地帯は終わるのでスノーシューに履き替えた。以降、下山までアイゼンの出番はなくずっとスノーシューを履いたままだった。ついでに日焼け止めを顔に塗る。この天気では今シーズン初めての盛大な日焼けが間違い無し。今朝出発するときに気付いて日焼け止めを持ってきてよかった。

 ここから鍋山まで尾根を素直に辿ると、ここから東にある1482m峰まで登ってから左に鋭角に折れて高度を下げるため、距離、高低差とも損をする。そこで1350m峰の先の1330m鞍部から左斜面へ入ってトラバース。それほど傾斜がきついわけではないが、幅の広いスノーシューで斜面を歩くと足の筋肉に変な力がかかって足への負担が大きい。途中で我慢しきれなくなり1405m峰南側の鞍部目指して登り始める。この斜面は一面のブナ林で東北らしい光景だった。

 尾根に復帰して一登りで1405m峰。ここもブナ林に覆われるが落葉した樹林の合間から鍋山が見える。そこまでの尾根もほぼブナ林であり危険地帯は無いようだった。

 1300m鞍部まで高度を下げてから登り返し。南東方向の日当たりのいい尾根で日差しで雪が緩んでスノーシューでも疲れる雪質だ。これじゃ鎌房山まで届くかどうか体力的に心配だ。やはり残雪期は早朝の雪の締まった時間帯に距離を稼がないとダメだな。南向きの尾根なので雪が少ない場所もあり、地面が出ているところは薄い笹だった。もしこの尾根の大半がこの植生だったら残雪期に来た意味がないなぁ。標高的にはそれほど高くはないので、本当に無雪期でも歩けるような植生かもしれない。

 落葉した明るいブナ林の緩やかな尾根が延々と続き、登り切ったところが鍋山だった。ここの西側の1419m峰の方が高いが、地形図では郡界尾根上の1410m峰を鍋山山頂としている。ここもブナに覆われたピークで落葉した今の時期は明るい場所だ。山頂付近には標識も目印も無し。足倉山同様にほとんど登る人がいない山らしい。せっかくなので足倉山に続いてテープを残す。積雪量がどのくらいなのか分からないので、このテープが無雪期にはどのくらいの高さに出ているのかも分からない。

 出発から3時間以上経過したので鍋山山頂でしばし休憩。西寄りの弱い風が吹いているので東側で休憩。日差しが暖かく寝不足も手伝って横になったら寝てしまった。

 出発前に今後の行動を検討。気温が上がって雪質が悪化し鎌房山へ行くにはかなり体力を消耗するのは間違いない。地形図上でおよその累積標高差を算出すると、鍋山から往復で約600m。無雪期の藪が無い山なら1時間半の登りと同等の体力であるが、緩んだ雪の影響でプラスアルファの体力消耗となろう。しかしまだ時刻は午前11時。今から下山を開始するとたぶん1時間くらいで車に到着だろう。この天気でそれはちょっともったいない。今の時期なら午後6時くらいまではライト不要で行動可能だろうから時間はたっぷりある。途中で充分休憩をとりながら歩いても暗くなる前には下山可能と見た。それにここまで来て鎌房山をパスして後日登り直すことを考えると、ここで足を伸ばした方がずっと時間も労力も少なくて済むのは間違いなし。覚悟を決めて北に進路を取った。

 しばらく北向きの尾根に変わるが、予想外に雪は締まったままで非常に歩きやすかった。気温が上がったとは言え、この時期だと北斜面の雪が溶けるほどには至らないようだ。これは大助かり。ただし、登りがきつい鎌房山上岳、下岳の登りは南斜面なのでこの雪質は望めないだろう。おまけに等高線が込んで傾斜はきつい。苦労しそうだ。

 ここまで目印等は全く気付かなかったが、初めて色褪せた赤テープを発見。低い位置ではなくこの時期に付けたとも考えられるが、尾根直上は時々地面が見えるくらい積雪量が少ないので無雪期のものかもしれない。ここにあるということは鍋山〜鎌房山間を歩いた人のものだろうか。

 1320m鞍部から登りにかかり1350m峰直下は雪庇が階段状に発達して雪壁のようになっていて、乗り越えるのが面倒なので最後は東側を巻いて尾根に出る。相変わらず明るいブナ林が続いていい雰囲気の尾根だ。雪の上にはあちこちでカモシカの足跡が残っていた。残念ながら熊の足跡は今回は見なかった。でもそろそろ出てきてもいい頃だと思う。

 1369m峰付近は大きなブナの木も無くなって大展望の尾根。西側には顕著なピークの高倉山。予想では東尾根には崖があると考えていたが、植生はどうもカラマツ植林のように見えたので危険地帯ではないらしい。本当にヤバい場所なら緑の常緑樹に覆われているはずだ。ここまでの雪が消えた地面の植生からして、たぶん高倉山も藪は少ないだろう。だったら雪の無い時期に登るのも面白いと思えてきた。ここは秋にでも来てみるかな。

 左手前方には鎌房山が見えているが、緑は少なく大半はブナ林らしい。等高線が込んだ上岳への上りは尾根上に少し緑があるが、マクロな視点では岩があるようには見えなかった。これはいい兆候だ。

 鎌房山へ続く尾根が分岐する1330m峰はてっぺんを通らずに西を巻いて尾根に乗り、意外に急な斜面を下っていく。ここは尾根が広く視界が無いときには下りはいやな場所だが、今は鞍部までしっかり見えているのでルート判断は容易だ。西側斜面はまだ日が当たりが悪いので雪の状態は良好で、スノーシューの歯がしっかり食い込んで快適に下れた。

 1200m鞍部から登りにかかるととたんに雪質が悪化、表面付近はすっかり緩んでしまって表面近くの雪ごと滑り落ちる始末で、キックステップの要領でスノーシューを蹴り込む必要がありいちだんと疲れる登りになった。特に1248m峰直下は地形図から読取れないがかなりの急傾斜で立ち木も無く、ピッケル併用で登っていく。

 1248m峰のてっぺんはアスナロが繁茂して鎌房山方向の視界を遮っていた。密生したアスナロの区間は20mほどですぐにブナ林の尾根に変わると1230m鞍部。ここから上岳山頂まできつい登りが続く。ここは途中にアスナロの緑があるので山頂までの様子は見通せなかったが、尾根は広く斜面といっていいくらいなので、もし途中に危険個所があっても迂回可能だろう。

 最初はそこそこの傾斜だがすぐに急斜面に変わる。アスナロで日当たりが悪い影響もあるのかここの雪質は最悪で、表面から地面まで全く締まりがない。急斜面の足元の雪が崩れて体を支えるのが困難で、何度もスノーシューで足場を固めて進む必要があった。立ち木やピッケルで強引に体を引き上げることもしばしば。おかげで翌日は胸の筋肉痛になってしまった。こんな場所はアイゼンの方がいいかもしれないが、雪の緩み方が半端ないのでその場合は腿まで潜ってラッセル地獄になっていただろう。ここはワカンくらいが適当だったかもしれない。

 最悪雪質の急斜面を登り切って傾斜が緩めば鎌房山上岳山頂はすぐ近くだ。再び背の高いブナ林に変わってなだらかな尾根を北に進むと上岳山頂。ここもブナに覆われた明るい山頂で人工物は一切無し。この山頂に立った人間の数はどれほどだろうか。もう鍋山は遠く、北側の下岳は目の前だ。休憩は下岳で取ることにして先に進んだ。

 上岳からの下りは北向き尾根になるので雪質は最高で一気に下る。ここもカモシカの足跡が先導してくれたが、踏み抜き多数のカモシカと違ってスノーシューなら踏み抜き皆無だった。

 1200m鞍部から登りに変わるとまた地獄の軟雪地帯で足元が定まらなくなる。部分的に急傾斜区間があって、尾根上を避けて右に巻いたりする。尾根上部は大きな露岩が散見されるようになるが、尾根は広いので岩登りをするような場面は皆無で全て右側から巻いた。岩の南側は地面が出ていたが、ここも藪は薄そうだった。

 傾斜が緩んでようやく最後の目的地である鎌房山下岳到着。ブナの明るい山頂には熊棚あり。最高点の西側はアスナロがあり、その南側は雪が広範囲で消えて薄い笹の地面が出ていた。やっぱりこのエリアは無雪期でも藪が薄いのは確定的だ。アスナロの枝にはボロボロになった青い古い荷造り紐があったが、山頂近くのブナには目印類は皆無だった。

 もう昼過ぎだが疲れているので無雪の場所で横になって昼寝。これから帰りの距離とアップダウンを考えればよく休憩しておいた方がいい。さすがに雪の上より暖かくて快適だった。

 さあ、長い帰路の始まりだ。下岳の緩んだ雪の急な下りはスノーシューのまま下ったが、表面の雪もろとも滑ることが多く何度かコケた。日が当たって表面が溶けた雪なのでコケると濡れる。袖口から入った雪もすぐに溶けて不快だった。上岳の登りは往路と同じく快適。ただし傾斜はあるので疲れるが。上岳は素通りしてこれまた緩んだ雪の急斜面の下り。ここも深い踏み抜きを避けてスノーシューのまま強引に下っていった。立木が多いのでピッケルはほとんど使わずに済んだが、1248m峰の下り始めの急斜面は木が無いのでスノーシューを履いたままバックで下った。

 鍋山から北に延びる尾根への登りは再び雪質が良くなって歩きやすい。もう時刻も遅いので雪解けも収まって締まる方向かもしれない。尾根に出れば大きなアップダウンはもう無いが細かなアップダウンはまだある。前の休憩から1時間半近く経過して疲れたため、場所が半端だが1369m峰の先で休憩。ザックを雪の上に寝かせて銀マットを敷いて足を伸ばして横になって休憩。私の場合、座るよりもこの方が疲労回復に格段にいい。これが最後の休憩になるだろう。

 さすがに午後の遅い時刻なので日当たりがあっても暖かさではなく涼しさを感じるようになる。1350m峰は東を巻いて鍋山へ登り返す。往路の自分の足跡があるだけで他の人の足跡が増えたりしていないのは当然だった。たぶん旭岳は賑わっただろうな。

 帰りは鍋山南西尾根を下ることにする。ここは最初から計画していたルートで、出発地の旧国道分岐へほぼ直線的に向かうことができる。ただし尾根を直進すると1230m峰を越えて道の駅まで行ってしまうため、途中で枝尾根に乗る必要がある。計画は標高1240mで南へ分岐する尾根に入ることにしているが、ここが判別できるかがポイントとなろう。また、標高1050〜1150m付近は等高線が混み合って傾斜がきついと予想され、アイゼンの出番があるかもしれない。

 鍋山南西尾根は顕著な尾根で、しばらくは地形図を見なくても尾根を外さず歩くことが可能だった。1419m峰付近は南側に雪庇が発達して足倉山の展望がいい。足倉山付近は地形図では崖マークだらけだが、ここから見る限りは明らかな崖は見られなかった。ただし植生はブナ林ではなく緑色の常緑樹(たぶんアスナロ)が主役で周囲とはかなり様相が異なっていて、これが山の険しさをよく表している。

 1419m峰付近で雪の穴があって部分的に地面が見えていたが、ここも笹は薄そうだった。真新しいカモシカの足跡を追って緩やかな尾根を下っていくと前方に動く物体を発見、足跡の主のカモシカだった。距離は50m程で私とカモシカとの間には木があるのでまともな写真にはならなかった。鍋山までの尾根は背が高い成長したブナが多かったが、この尾根は幹が細い落葉樹の密集した場所が多いのが特徴。もしかしたら一度伐採されたのかもしれない。

 この尾根上の2個所で赤テープ発見。劣化の程度は鍋山北尾根で見たテープと同じなので、おそらく同じ人が付けたものだろう。雪庇で展望の開けた尾根を下ると左に分岐する顕著な尾根が登場、高度計を見るとここが計画の尾根に間違いないだろう。意外に分岐が分かりやすく少し拍子抜けだった。

 こちらの尾根も発達したブナではなく細い落葉樹が狭い間隔で生えた植生が続く。驚いたことに今まで見た赤テープはこの尾根に続いていた。テープを残した主は私とは逆方向に鎌房山を往復したようだ。こんな枝尾根を使うとはよほど籔に慣れてしかも読図力のあるハイカーだろう。私が気付いた赤テープの総数は3つだけ。時間経過で落ちてしまったものもあると思うが、そもそも付けられたテープの数はかなり少なかっただろう。これも手慣れた証拠だろう。いったいどんな人なのか非常に興味があるが、ネットで検索してひっかからないのではそれ以上調べようがないのが残念だ。

 尾根を正確に辿っていくが標高1100mくらいで尾根が細くなり灌木が密生してその先が急激に落ち込んでいるような気配を感じ、ここまで下れば斜面を下りてもいいだろうと東側斜面に足を踏み入れる。ここも矮小な細い木の集まりで隙間を縫うように急斜面を下っていく。南斜面で雪は緩みに緩んでスノーシューを乗せた表面の雪がごく小規模の雪崩のようにまとまって滑り落ちるので、歩くと言うよりそれに乗って滑るような感じだった。バランスを取るのが難しく何度もコケたが、溶けた雪なので手袋や衣服が濡れてしまった。

 傾斜が緩むと杉植林に変わり、短い植林帯を抜けると往路の自分の足跡が残った旧国道に出た。朝は締まっていた雪は緩んでスノーシューでも沈むようになり、最後の力と出して平坦地の歩き。ここまでずっと下りだったので水平地帯でも足が重く感じた。

 短い歩きで車を置いた除雪終点に到着。出発から約10時間。今シーズンで一番歩いた日となった。

 

都道府県別2000m未満山行記録リストに戻る

 

2000m未満山行記録リストに戻る

 

ホームページトップに戻る